日本武道館や京都タワーの設計者として知られる
山田守の自邸が期間限定にて公開されるとあって見学に伺いました。
1894年生まれの建築家です。
敷地は青山学院大学のすぐ隣。
1959年、65才のときの建築とのこと。
ブーメラン型の平面にて庭を抱くように建物はあります。
今では、大きく育った緑に埋もれるよう。
要所要所に曲線が使われています。
内部は撮影できませんでしたが、部材の線を消すモダンな和風。
それでも固い固い印象とならなかったのは、曲線の影響でしょうか。
モダンでシンプルな建築を目指しながらも
生物的なやさしい空間をつくろうとする葛藤の中にある建築のように感じました。
続いては、松涛美術館。
白井晟一の設計。1905年生まれで、建築は1980年の竣工。
和でもない、洋でもない、独特な佇まい。
閑静な住宅地の中にひっそりとあります。
一番の特徴は建物の中心にある、水盤のある光庭部分。
周辺の環境から切り離されたひとつの世界。
反響する水の音に満たされた静かな空間。ガラスの反射によって無限に続くよう。
各部材や取り合わせは複雑なものが多いのですが
それらが高度に調律されてひとつの世界観がつくられています。
恣意的なようで、違和感がない。
奥の深い建築。
keep smiling!
奥野 崇
さきの授賞式にあわせて、東京近辺をうろうろと。
乃木坂のギャラリー間で開催中「堀部安嗣展 建築の居場所」へ。
堀部さんの建築は
竹林寺納骨堂 / 高知 、 鎌倉山の集会場 / 神奈川 、 香川での講演会
にて見学や拝聴、お話しさせて頂きました。
心に響く言葉。
「今、建築が人びとのたくさんの希望や欲望を背負っている。
それによって、もともと建築がもっていた基本的な役割と佇まいが失われてきているように感じる。
私は建築が背負う重荷を少しずつ取り除いて、本来のシンプルな姿に戻してあげたい。
堀部 安嗣 2017年」
建築の根源的な意味を見つめ続け、素直に実践し続ける氏。
きっと、建築に感動し、憧れ、渇望し、愛しているのだろう。
徹頭徹尾取り組む姿に、勇気を頂いた気がしました。
続いて、新宿区中井にある林芙美子邸へ。
「放浪記」などで知られる昭和の小説家の自邸です。
設計は山口文象の手によるものですが、建築にあたり林芙美子本人もかなり勉強したよう。
山口による繊細な数寄屋風テイストと、
林による普段使いの民家風テイストが混ざり合う、
こじんまりとした、親しみ深い建築となっています。
派手さはないですが、見るほどに いいなあ と思う住宅。
keep smiling!
奥野 崇
修学院といえば離宮。
17世紀中頃、後水尾上皇の指示によって造営されたものです。
当日の見学願いにも、運良く空きがありすべり込めました。
ずっとみてみたかった、修学院離宮。
その壮大さに感動。
全体構成の大胆さはもちろんですが、
部分においては強引なところもあるような。
設計において、ちまちまと悩んでいたことも
これでいいんだ、と力を頂いたようでした。
keep smiling!
奥野 崇
昨日、一昨日は大阪と京都へ。
最初に、池田にあります即庵さんへ。
工事進行中のお茶室の参考にさせて頂くべく、西渕工務店の藤原棟梁と同行。
気がつけば、私は3度目の見学。
担当の飯西さんには、都度お付き合い頂きまして感謝しかありません。
やはり作り手である大工さんの視点は違うなあ、と。
いろいろと私も勉強になりました。
行きましょう、と言ってくださった西渕社長、
段取りしてくださった竹本監督、
忙しい中時間を割いてくださった、藤原棟梁。
ありがとうございます。いい建築にいたしましょう。
続いては、祇園にあります三浦照明さんへ。
和風のすっきりした照明に惹かれて、思わず購入させて頂いた縁。
代表の三浦さんともお会いでき、お話しを伺えました。
同じくお茶室まわりへ使わせて頂きます。
手づくりの現場。ひとつひとつ作ってくださる。
わくわくしてしまい、写真を一枚。
次に、修学院の唐長さんへ。
京唐紙をつくり続けておられる専門店。
建主さんも同行しての打ち合わせとなりました。
伝統文様の数々。
わずかな光に反応する雲母の美しさ。
今のように照明がなく、蝋燭のわずかな灯りを扱う。
先人の美学にふれた気がしました。
keep smiling!
奥野 崇
土壁のことを勉強に、内子の矢野左官さんへ。
重要文化財の改修にも携わっておられる氏。
たくさんの時間を頂きました。ありがたいこと。
表へでると、陽が落ちてすっかり夜に。
昼しかみたことのなかった内子の町並みはしっとり。夜も良かった。
必要以上にてらさないこと。
心地よい暗さでした。
keep smiling!
奥野 崇
宇和町での打ち合わせ終わりに、愛媛県歴史文化博物館へ。1994年竣工。
見たい見たい、と思いつつも、今回が初の見学。
全体としても、部分にしても
重みがあって、味のある建築。
凄い建築だなあと思ったら、
日建設計の大谷弘明さん設計とのこと。
さすがは。
後に愛媛県美術館を設計され、近作では京都のリッツカールトンも手掛けられています。
今は昔、県美術館のディティールをスケッチしてまわったのを思い出しました。
愛媛の歴史をたどる展示も良く、おすすめの博物館です。
keep smiling!
奥野 崇
大洲の肱川沿いにある、臥龍山荘。
古くからの景勝地であった場所を、木蝋貿易の成功による明治の豪商、河内寅次郎がつくらせた数寄屋建築で
今年の7月には国の重要文化財に登録されました。
週末はしとしと、雨。
雨にくるのははじめて。紅葉、黄葉の木々が美しく映えます。
苔に落ちた葉もきれい。
この山荘は臥龍院、知止庵、不老庵と三つの建築からなります。
最も奥にある不老庵に続く飛び石の中に、ひときわ大きい石。
安定したその石からふうっと顔をあげると、肱川に浮かぶ建物が。
縦長のプロポーションがあいらしい。
アプローチに対して若干角度をふって建物を配置。
川沿いの崖に懸造り(がけづくり)と呼ばれる工法でたちます。
茅葺屋根や塗り残し壁など、草庵としての素朴さを持ちながら
全体的に背の高い空間で、手の込んだ仕事が多く、高貴さも持ち合わせる。
keep smiling!
奥野 崇
少し前のことですが。
手嶋保さんの設計された三秋ホールにて。
とつとつと語る、飾らない氏の人柄。
つくる建築のにじみでる気配との一致をみたよう。
煎じ詰める、という言葉が印象的だった。
keep smiling!
奥野 崇
住宅におけるここちよさ、
について現代にも多くの影響を与え続けている、故吉村順三。
吉村先生が設計された別荘が、宿泊施設へと転用されているとのこと。
HAYAMA Funny House
先の鎌倉山からもほど近いようで、これはいくしかないな、と。
写真右の階段を下りると海、という別荘地の中にあり、
続きでつくられた2戸の別荘とガレージを改装し
2室のホテルとレストランとしてリノベーションを行っています。
手の届きそうなほど低い軒高の控えめな姿。
アプローチは建物の背面からで、細い路地のような雰囲気。
体にふれそうなくらいに迫る植物。
外壁がくぼんだような玄関部分。
斜めに続くホールの先には、パノラマに海が拡がるリビングルーム。
ホールとリビングには45cmのレベル差があり、
トントンと階段をおりながら段々と水平線が見えてくる、という感動的なシークエンス。
緩やかなカーブを描く天井は、室内を柔らかく包み込みます。
海沿いにある、絶妙なサイズの洞窟のポッカリあいた穴から眺める、感覚。
天井高さの変化と開口高さがとてもいい。
壁においても要所に柔らかいカーブ。
まるで、軽やかに踊るようなプラン。
動線処理と同時に、各居場所に包まれ感をつくりだします。
客室の実測スケッチ。
プランの振れ、がみてとれます。
海沿いという立地もあり、築約50年ということもあり、
内外装とも、多くの改修が加えられています。
仕上げ関係は白く塗りつぶされ、多くの造り付け家具は既になくなっています。
しかしながら、空間の輪郭や開口の設け方などは
設計時に思い描いたであろう姿として現在もあります。
それは、時代を超え、今もこの場所とともにあります。
空間がつくりうる幸せな空気感や、
プランの可能性。
たくさんの残像とともに、思い出深い旅となりました。
keep smiling!
奥野 崇