フィンランド南の港町ヘルシンキを離れ、北上。
アアルトの出身地であるユヴァスキラへ。
まずはユヴァスキラ大学へ。
スポーツ系の活動が盛んで、付属の小学校も併設しており
ちょうど子供達がグラウンドに。
アアルトはこのグラウンドを馬蹄形に囲むように各施設を配置しており、
賑わいを大切にしたのがうかがえる。
人との繋がりを大切にしたのだろうな。
隣接する、アアルト美術館へ。
アアルトの活動の一連を展示、解説する施設。
中のカフェが気持ち良い。
なんと、ミュージアムショップには
アアルト建築で多様されるマッシュルーム型のタイルが販売されていました。
重いので諦めます。
続いて音楽ホールへ。
ユヴァスキラは比較的コンパクトな街で、アアルト作品は集中しており視察向きです。
ホワイエの空間が爽やかで、人々が陽気に語あう様子が目に浮かびます。
見たかった建築です。
ユヴァスキラ郊外のセイナッツァロの町役場へ。
学生時代に世界の建築を紹介する映像でみてからの憧れ。もう10年以上前の話です。
現地にて聞きましたが
残念なことに今年に入ってからは一部を図書館として使う以外は
町役場として近隣住民に使われてないそう。
小さな町のため、役所機能はユヴァスキラに統合されてしまい、
今後の利活用方法については、住民によって決定されていくとの事。
広く開かれた用途になることを望みます。
中庭まわり、議場、取手まわり。
真鍮と皮をつかった手仕事。
図書館として使われているスペース。
子供の読み聞かせに使った家具なのか、順番に小さくなるベンチが引き出せます。
かわいらしい。
階段を上がった先の中庭はなんとも落ち着くスペースで
控えめな玄関部分からの風景は住宅の匂いもしてきます。
思っていたよりも小ぶりな施設で、
のどかな町の顔見知りの人々が集う、町の集会場的な位置付だったのだろうか。
町役場という少しお堅いイメージではなく
親密で穏やかな空間で、どこか懐かしい印象が残りました。
keep smiling!
奥野 崇
続いて、ヘルシンキ郊外のアアルト大学(旧ヘルシンキ工科大学)へ。
見とれてしまうような情緒的な階段はここでも。
手摺まわりは楽しい。
いずれの建築でもその自由さとなめらかさは目立ちます。
運良く講堂も見学できました。
ひだ状の部分から光がもれる様子はとても綺麗。
自然光での状態も見ることができました。(カーテンが全開でないのですが)
アアルトのデザイン的特徴のひだやうねり。
松やモミなどの針葉樹が多いフィンランドの国。
後にふと野原にたくさん落ちた松ぼっくりをスケッチしながら気付く。
あぁ、自然をヒントにデザインしたのだ。
変わって、講堂の勾配を利用した外部空間。
さながら、円形野外劇場のよう。
あっ、とおもわず声が出ました。
そういえば、アトリエアアルトの中庭部分にも同じような空間がありました。
陽を大切にするフィンランド文化を下敷きに、
階段に座る学生のように、アアルト自身も仲間と集まって語らう時間を好んだのだろう。
アアルトの肌の温度が感じられたようで、なんだか嬉しくなりました。
keep smiling!
奥野 崇
連休を利用して北欧フィンランド、スウェーデンへ建築を巡る旅へ。
今年はインプットを意識的に増やそうと、半ば無理やりの強行軍。
いざ、 アスプルンド、アアルトの建築を求めて。
ヘルシンキ空港につくと22時の夕焼け。
それはそれは美しい色彩が迎えてくれました。
建築物のアウトラインが空に影をつくる様子が焼き付いていて、ホテルに戻るなりかきとめます。
まずはヘルシンキにあるアアルトの自宅へ。
通りに対しては背を向けるプランはアールトの特徴的なところ。
アトリエも併設した住宅。
アアルトは先の写真奥の窓辺に座ったそう。眺めの良い明るいところ。
自然光を大切に扱う氏の姿が目に浮かぶよう。
住宅として使ったプライベートな部分は、床の高さを変えることによって表現されます。
北欧では珍しかったといわれる引き戸によって緩やかに仕切る。
日本の建築も大きかったとお聞きしました。
リビングの奥にあるダイニング。
平面に対して高さ方向が大きすぎるのか、リビングとの空間の変化に乏しいからか。
少し間延びした印象。
2階にある魅力的な窓際。
高さやバランス、家具との調和が肝なのか。ずっといたい、と思わせるところ。
聞くと先週まで雪が降っていたというフィンランド。
一気に夏がやってきて庭の植物も色付いて、華やかに。
続いて、ほど近いところへ後に増設されたアトリエアアルトへ。
オフィス部分は開放的に。
大きな吹き抜け空間では設計したペンダント照明の検証も行われたとのこと。
いずれも明るくて、健康的な雰囲気。
自分たちのオフィスであるためか、ディティールは実験的なところが多い。
陽が差し込む壁面は図面や資料を掲示スペースとして、プレゼンテーションにも利用されたとききます。
長く厳しい冬には、日照時間が3時間ほどになる北欧の国々。
陽が差すと好んで日光浴に外へでて、夏の晴れの日には公園は人で一杯になるそう。
陽の光に敬意と喜びを込めて大切に扱うこと。
幸せな窓辺をつくること。
keep smiling!
奥野 崇
雑多なコロンボ市内にある、バワの自邸No.11。
長屋状の住宅を買い足しながら、改修を進め現在の姿に。
念願の見学が叶いました。
内部は迷路のように複雑で
蟻の巣のように各部屋が玉突き状に続きます。
平面プランが想像できなくなり、まるで迷宮。
図面でここか、と確認。
右のスケッチはバワが愛したロールスロイス。
主なき今もひっそりとガレージに置いてあります。
長屋という立地から、先のルヌガンガのような広大な庭園はありません。
しかしながら、ポツ ポツと点在する小さな光庭には美しい光が。
白く塗りこめられた壁や床は
光をより抽象化し、植物や家具、置物をより顕在化させるよう。
廊下の突き当たりにある、ラキさんがつくったふくろう。
もはや神々しさまで感じます。
2階に上がる階段は白い光の洞窟。
そこに熱帯植物のツルに模した鋳鉄の手摺が迎えてくれます。
階段、廊下のつくりかたは角のない丸みを帯びたデザインでまとめるのはいくつかの作品で見られましたが、
今回が最も心に残りました。
空想の世界が目の前に現れたよう。
好きなアーティストである、杉戸洋さんの作品を思い出しました。
現在この住宅はホテルとしても利用できるようです。
バワ財団が管理運営を行っているとのこと。
次回は是非宿泊して実測してまわりたいもの。
もうひとつ、海辺のベントータのまちにあるNo.87と呼ばれる住宅。
広大な庭園をもちます。
外に追い出した、リビングルーム。
忘れられないシーン。
寝室におちる、柔らかな光の一片。
スリランカ、バワの旅の最後に。
王国として深く長い歴史を持ちながらも
かつてはイギリスの植民地という過去を背負い、現在は敬謙な仏教国としてあるスリランカ。
バワはスリランカという国が独立し、そのアイデンティティーを確立していく過程の中で活躍した建築家。
自身はヨーロッパで建築を学びながらも、年を重ねるごとにスリランカ固有の建築言語を取り込んでいきます。
スリランカの持つ歴史や、気候風土に根ざした住まい。
それらスリランカらしさ、を謙虚に踏襲しながらも、現代のライフスタイルの中へ溶け込ませていく。
その姿勢に今後、私達が取り組んでいく道筋が見えた気がします。
またいつか、もう一度バワの建築をみてみたいと思います。
そのときに、自分の目にどう映るかをたのしみにしながら、
新たに日々の仕事に取り組んでまいります。
keep smiling!
奥野 崇
旧トリトンホテル。
手前の水盤、プール、インド洋が繋がります。
インフィニティプールの発明といい、
バワは建築と環境の一体化・連続を図ったのを感じます。
印象的につくられる階段。
連続する中庭空間。内外が曖昧な様子。
施設内にポツポツとおかれる、ラブチェア。
両側から座ると、お互いに見つめるように角度が調整されています。
ロマンチックで素敵。
いくつかの客室を見学。バワの後継者といわれるチャンナによるデザイン。
続いて、ブルーウォーターホテル。
開口上には簾のようなものが。
写真では分かりにくいですが、景色はかなり透過してみえます。
客室内は柔らかい印象。
訪れたホテルはどこもそうでしたが、天井が高い。
日本の住宅において
このところ低く、重心を抑えた設計をよくみますが、個人的にはこういう開放的なところも欲しい。
こもるところと、伸びやかなところ。自分にとってのキーワードになりつつあります。
ベッドヘッドが入り口側の珍しいレイアウト。
シャワールーム内からも海が望めるようになっています。
最後はライトハウスホテル。
バワは生前、このテラス席で沈む夕日を眺めたそう。
アーシーな色の塗りわけがみられます。
その地方の土の色や、植物の色は
まち並みや建物の色彩に大きな影響を与えます。
大事にしたいところ。
壮大な環境に開くだけでなく、小さな単位の親密な空間を散りばめられます。
「そうは言っても、大事だよね」とバワの声が聞こえるよう。
いろんな場面や居場所をつくることの嬉しさ。
次回は住宅作品についてまとめて、スリランカの旅を締めくくろうと思います。
keep smiling!
奥野 崇
ジェフリー・バワの生涯をかけた仕事、ルヌガンガ。
1948年に朽ち果てたゴム園を購入し、2003年84歳にて亡くなるまで
週末住宅や大切な客人を招くところとして手を入れ続けた。
その建物群とランドスケープは
「世界で最も美しい庭園」とも称される。
敷地はベントータ川を引き込んだ淀みのようなデダワ湖のほとりにある。
ちなみにシンハラ語で、ルヌは塩、ガンガは川の意で塩の川ということ。
インド洋にほど近いところにあります。
巨大な敷地の中に点在する建物は現在ホテルとしても利用されています。
残念ながら泊まることはできませんでしたが、ゆっくりと夕食をとることができました。
建物のひとつ、シナモンヒルハウス。
建築と庭園が一体となった、アウトドアリビング。
その天井の高さからか、もはや屋根の存在を感じません。
シャワールームの中には木が!(写真には写ってないですが、手前に木が植わってます)
手塚さんのつくられた、ふじ幼稚園を連想。
訪れたことがあると聞いたことがあるので、参考にされたのか、そうでないのか。
敷地内の階段のデザインは独特で印象的。
先に訪れた世界遺産、シギリヤの引用か。
夕暮れにかいたスケッチ。
柔らかいカーブを描く縁石が、眼下に拡がるデダワ湖のアウトラインに重なる。
なんと、大地から発想したと知る。
建築と庭園、大地が一体となった楽園。
その感動から、しばらく動けませんでした。
keep smiling!
奥野 崇
インド洋沿いの海辺にあるヴィラ。
THE VILLAとCLUB VILLA。
正に隣り合わせにある宿泊施設。
あいにくTHE VILLAのほうはウェデイングの貸切状態だったため少しだけ。
現在はバワの関係者の手から離れていますが、
白と黒を好んだバワを慕ってかモノトーンのインテリア。
古い家を買い取り、バワの手によって改修、増築が繰り返されました。
もう一方のCLUB VILLA。今回の宿泊先ともなりました。
小さな単位で内部と外部が繰り返されるプラン。
もちろん温暖な気候は背景にありますが、めくるめく空間体験の多様さはバワの真骨頂。
客室は約20室程の小規模なもので、
背の高いエントランスのホールから4室程のユニット単位で散りばめられています。
宿泊の客室以外も見学できましたが
建物の断面形状をいかした、全室ほぼプランが異なる客室。
ゆったりと滞在して部屋の違いを楽しむのもひとつかもしれません。
客室内でも居場所のつくりかたは光ります。
客室内の実測。
平面図右の出っ張った窓辺のスペースは庭を望む、とても気持ちの良い空間でした。
バワがそこでどう佇んだのかが想像できるようなプランで
インテリアや家具も含めた、過ごし方の提案をしてくれているよう。
建築、インテリア、家具、照明、ファブリック、調度品がひとつとなるということ。
keep smiling!
奥野 崇
インド洋のまち、ベントータへ。
バワの初期の作品である、ベントータ・ビーチ・ホテル。1969年竣工。
ただし、現在の姿は増築や改修が加えられ、オリジナルとは少し違います。
当初のデザインは中庭に水盤を抱く、こじんまりと落ち着いた様子だったそう。
しかしながら、スリランカの歴史をヒントにバワのデザインはみてとれます。
エントランスの色鮮やかな天井。
実は、これ
カンダラマホテルのあるダンブッラの世界遺産、
スリランカの人なら誰もが知る歴史ある寺院、石窟寺院の天井画のオマージュ。
仏像の天井に描かれた天井画をヒントに、バワはエントランスのデザインを決定しました。
海外の人も多く訪れるホテル建築。
そこへスリランカを象徴するデザインを取り込むこと。
建築にメッセージを込めること。
レストランには、デフォルメしたデザインへと繋がっていきます。
中庭の水盤をみる回廊に設けられた、居場所。
ここでもたまりの設計は流石の一言。
直線的な構成のなかに、斜めの使い方が巧く絶妙の落ち着き感をつくります。
そこに座って中庭を眺めたスケッチは右側のもの。
左は回廊部分の断面。高さ寸法がミソと思います。
張り出した建物の角度はモンスーンで吹き荒れる降雨の雨降線から導かれたもの。
階段の納め方もおもしろい。
階段部分は穴倉のような柔らかいデザインが多く採用されています。
遠藤新のつくった武庫川女子大学の階段と似ていた記憶があります。
飽きさせない移動空間の演出。
続いては、同じくベントータにある隣あわせのクラブ・ヴィラ、ザ・ヴィラへ。
keep smiling!
奥野 崇
スリランカ最後の王国があった山間部のまち、キャンディ。
1815年からスリランカは全土をイギリスの植民地として、1948年の独立まで歩んでいきます。
周囲を山々に囲まれたまち。
八幡浜の山側の風景に重なったのは、個人的なものでしょうか。
キャンディにはバワ作品はありませんが
スリランカの重要な施設、佛歯寺が。釈迦の犬歯が納められています。
宿泊先はコロニアル様式の美しい、クイーンズホテル。
佛歯寺のすぐ前にあります。
タイムスリップしたような趣きある客室。
天井が高い。
バワも生前、このホテルを利用したそう。
右にかいてあるのは、佛歯寺の犬歯を納める容れ物。
運良く拝見できました。
アジア特有のパワーみなぎる、まちの様子。
外国人は少なく、現地のマーケットへ。
野菜、ヤシの実、南国のフルーツ、米の計り売り、食肉売り場、犬の多さに圧倒されました。
続いて、バワによるホテル建築が残るインド洋沿岸部へ。
keep smiling!
奥野 崇
マンゴーのような形をしたスリランカの中央の少し北にあるダンブッラの町。
そこからポツポツと民家が続く、そのまた奥に
バワ特集の表紙を飾ってきたカンダラマホテルはあります。
その姿は、熱帯のうごめく緑に取り込まれるよう。
建物と自然との境界線はなくまさに一体といったところか。
バワ本人は、50年後には野生動物の住処になればよい。と力説したとのこと。
周辺の緑のなかを空中散歩するかのような客室廊下部分。
レストランも自然と一体にあるように。
フチのないインフィニティプールはバワの発明と言われています。
いつか誌面でみた、岩が剥き出しのエントランス部分。
集光の強い光が陰影を際立たせます。
外の力強い自然に対しての配慮か、客室内部はいたってシンプル。
ファブリックの使い方、照明のディティールなどバワらしさ、が垣間みえます。
建物と自然が一体となったヴィジュアルがあまりに印象的だが、
体験してみて思ったのは、あちらこちらに居場所をつくるバワの巧さ。
客室を片廊下型の廊下で接続しているため
その廊下部分は単なる移動スペースとして単調になりがち。
バワは客室を一定数のユニットにわけてその隙間部分に
湖が見えるスペースや、岩肌を望むスペースなどそこそこに落ち着いたたまりをつくる。
自然を愉しむ処をいくつも用意してあって、
次は何、とわくわくする。飽きさせない。
うろうろ、うろうろしてしまいました。
一見マクロに建物の姿を設計しながらも、ミクロの部分が魅力的な建築。
いいなあ。
余談ですが。
ロビーにあるふくろうの彫刻はあまりに有名で
バワとの建築においてもアートにおいても、協働関係にあったラキ・セナナヤケの作。
そのラキさんはカンダラマ近くにお住まいとのことで、お会いできました。
自然のなかに悠々自適に暮らされていました。
ここにもふくろうが。(現地の言語であるシンハラ語ではバッサというそう)
好き、なんだそう。
感動のバワ建築の初対面の興奮さめないまま、
古都キャンディへ。
keep smiling!
奥野 崇