先の週末は、香川県三豊市へ。
向かったのは、堀部安嗣さん設計の住宅、讃岐緑想。
西讃を代表する工務店である、菅組さんのモデルハウスです。
民泊として一棟貸しされている、とのことで
なかば勢いで予約をお願いしました。
堀部さんのことを知ったのは、2004年発刊の建築専門誌「ディテール冬季号」
建築家の 故 永田昌民さん、横内敏人さんとの対談と
それぞれがつくられた建築の紹介というものでした。
僕は、当時20代前半で建築設計の実務についた頃。
その言葉と建築作品に心打たれ、
何度も何度も読み込んだことを覚えています。
対談からの抜粋
"主観性というのは、勝手気ままにやるというのではなくて、経験に裏打ちされた、自分の体に肉体化されている感覚に正直につくる、そういう主観性だと思いますが、そういった設計思想でつくられたものは非常に安心感がある。(中略)記憶というものの継承をちゃんと考えていらっしゃるのではないか (中略)土地がもっていた記憶をどう継承していくか、周辺の風景と断絶しないでどう将来へつなげていくか、あるいは永田さん、横内さんの出会ったものを次に伝えていく。主観性を通して記憶というものの継承を大事にしていらっしゃるんじゃないか"
実際の建築を一日体験してみて。
十分に煎じ詰められた全体と部分、椅子に腰掛けた時に感じるフィット感。
それはまるで、大きな家具のような住まいでした。
ほぼ30坪と、決して大きくないその建築には、
居心地の良さを追い求めた多くの先人たちの面影と、
堀部さん自身の経験に基づく揺るぎない価値観とが在りました。
keep smiling!
奥野 崇
思えば、久しぶりの晴れの朝。
気持ちの良いさわやかな光に迎えられました。
引き渡しから半年を経た、来住町の家へ。
日々の暮らしを丁寧に、大切にされています。
日常への愛情あるまなざしを感じずにはいられません。
良いときも、悪いときもあるのが人間。
新しい住まいが、
安心できる居場所になれたのならば、
もうこれ以上のことはありません。
keep smiling!
奥野 崇
先の週末は、半年ぶりに空路で愛知県へ。
名古屋の家は、
オンラインでの打ち合わせを重ねてきましたが、
無事、基本設計の取りまとめを迎えました。
向かう機内にて。
梅雨曇りの切れ間からは、
穏やかな瀬戸内海の多島美を見ることができました。
keep smiling!
奥野 崇
南楽園からは、古代蓮の開花の知らせが聞こえてきました。
二十四節気では小暑の頃。
「大暑来れる前なればなり」 暦便覧
本格的な暑さが到来する前段階、ということ。
小暑を迎えると、衣食住のあらゆるものが夏向きのものに変わっていきます。
また、七十二候で小暑の初候はその名もすばり
「温風至」(あつかぜいたる)
"温風"と聞くと、暖房器具などのそれを思い浮かべてしまいますが、
本来の"温風"とは、あたたかい南風のことを指しており、夏の季語にもなっています。
その"温風"も、梅雨の時期によって呼び方が変わります。
梅雨の初め頃は、黒南風(くろはえ)
ちょうど中頃は、荒南風(あらはえ)
終盤になる頃は、白南風(しろはえ)
各時期の雲の様子を色で表現したもので、漁師さん発祥の言葉ともいわれています。
梅雨の終盤は、特に豪雨になりやすい頃。
現在も九州を中心に予断を許さない状況です。
どうぞ皆様、最大限の警戒を。
keep smiling!
奥野 崇
デンマークの著名なインテリア雑誌のエディター・スタイリストを長年務める、Mette Barfod。
彼女が中心となって、
2019年に創刊されたのが"ARK JOURNAL"です。
テーマは、『私たちの周りの空間、そこに置くオブジェクト、そのオブジェクトの作り手』
その存在を知った時から、気になっていましたとも。
流通量が少なく、国内ではなかなか見つけられなかったのですが
ハンブルクの書店でようやく発見。
約一ヶ月をかけて、はるばる松山までやってきてくれました。
建築、インテリア、デザイン、アートの共振に
スカンジナビアの美意識や価値観を通してフォーカスしていく。
タイポグラフィーも独特の風通しのよさで
誌面の隅々にまで、透きとおった空気感で満ちています。
keep smiling!
奥野 崇
人はおもったよりも
随分敏感で、繊細な感覚を持っています。
陽の傾きによる光量の変化、
肌をなでる微細な風のとおり、
香りや音の強弱やその距離感、
気温・湿度の移り変わり。
目に見えるものも、見えないものも。
それらは、分かつことなく居心地や安心感に作用しているのでしょう。
まさに日常の舞台となる、住まい。
なるべく穏やかで、
じんわり、滲み出てくるような空間がいいなあ。
一年を経た、氷見のパン工房にて。
日々の出来事を笑顔でお話しくださいました。
keep smiling!
奥野 崇
この季節の代名詞ともいえる、アジサイ。
私たちの事務所でも、小さくて控えめなヤマアジサイが満開をむかえています。
個人的には、ガクアジサイや、ヤマアジサイの可憐な姿に心惹かれます。
ガクアジサイは多くのアジサイの原種のもので、
日本の海岸付近に自生している、別名ハマアジサイ。
一方、ヤマアジサイは山中の沢付近によくみられ、別名サワアジサイとも。
いずれも山野の中ひっそりと咲くその姿に、魅力を感じずにはいられません。
アジサイの語源は、はっきりしていないようですが、
歴史を振り返って、その表記の多さに驚かされます。
古くは万葉集で詠まれた「味狭藍」「安治佐為」。
その後も「阿豆佐為」「集真藍」「安知佐井」「七変化」「八仙花」「四葩」などなど。
現在、最もよく使われる「紫陽花」という表記は、
平安時代に学者道順が、なんと他の花の漢名と間違えてあててしまったものなんだとか。。。
どんよりした梅雨曇と、しとしと降る雨の日々。
モノトーンの景色の中、その一隅を色彩豊かに明るくしてくれる姿は、
「紫陽花」という名がぴったり、と改めて思うのは私だけでしょうか。
keep smiling!
奥野 崇
建築の正面性をあらわすのに"ファサード"という言葉があります。
約2500年前、ヨーロッパ建築史のはじまりである古代ギリシャにおいて、
その概念は生まれたといわれています。
パルテノンを代表とする神殿建築を前に、
人々に対して、その建築が正面からみて強く、全てわかるようにと考えられたものです。
僕は現代の住宅においてもなお、
"ファサード"という言葉がしばしば使われることへの違和感を感じていました。
正面、あるいは見えるところだけを体裁よくすれば良いものなのか。。。
来月竣工予定、今治の家の足場が取り払われました。
いわゆる裏手の様子ですが、素朴なその姿が気に入っています。
雨風をしのぎ、無理なく、整然たる佇まいにする事。
それだけで、その姿は十分安心に値する。
ひいては、かつての美しい町並みや集落はそうであったのだと思います。
keep smiling!
奥野 崇
二十四節気での芒種の初候、
6月5日から9日頃を、蟷螂(かまきり)が生まれる時期として
蟷螂生(かまきりしょうず)と呼ばれます。
自然の中へ、と足を延ばした週末。
ふと木製ベンチの上に
黒い小さな、ちょうど蟻のような生き物を見つけました。
よく見るとそれは、
成虫と同じ形をした小さな小さな子蟷螂。
蟷螂(かまきり)といえば、
無謀にも強者へ立ち向かっていくたとえとして
「蟷螂(とうろう)の斧」ということわざがあるほど、日本ではポピュラーな存在。
一方で、鎌で獲物を狙う特徴的な姿が、
拝んでいるようにみえるので「拝み虫」という異名を持ちます。
ヨーロッパでもやはり、
その姿に祈りを連想したようで「祈り虫」とも「預言者」とも呼ばれるそう。
おもしろいですね。
子蟷螂はどうかといえば、、、
エイエイ、としっかりかわいらしく
拝んでいましたとも。
keep smiling!
奥野 崇
現場へ向かう移動中。
ハッと、そのみなぎる生命力に思わずカメラをとりました。
松山と今治のちょうど間、玉川は昔から好きなところです。
毎日、日付がかわっても働いた20代。
山間を抜けた先にある風景が好きで
日曜になると、よくここで絵を描きました。
近所のおばあちゃんと仲良くさせてもらったのも、今はいい思い出。
いつかは水の側で暮らしたい、と心に決めています。
keep smiling!
奥野 崇