メキシコシティでは、レゴレッタの約50年前の仕事、カミノレアルホテルへ宿泊。
もちろん部分的な改修はなされていますが、色褪せないその姿に感銘をうけます。
続いて、バラガン視察。
バラガンは最後期の前の約10年、建築の世界から離れてしまいます。
その直前の仕事、メキシコシティの高級住宅街にあるサン・クリストバルの厩舎。
バラガンのおもう理想的な暮らしとは、馬と共にあるものだったよう。
人の住まう住宅と、馬の厩舎、人と馬の為の乗馬のスペースがまとめられています。
キャリアの初期は機能主義的な仕事を行ったバラガン。
ある時期からは、自分の想う建築のみをつくる、と皆に宣言し取り組んだ仕事。
シンボルツリー的なパドック、馬の脚を冷やすプール、馬に乗ったまま通り抜けられる仕切り壁。
建築に求められる機能は満足しながらも、息をのむような美しい瞬間をつくる。
折り重なりや色彩、縮小と拡大など
様々な技法によって唯一無二の空間をつくったバラガン。
その上で最も大切なのは、彼の思想と思っています。
建築には機能を超えて、心に響く空間をつくることもできる。
対峙するものではなく、ある種、人を支配するような世界をつくりうる。
バラガンの建築を体験して、
その内向的で詩的な空間に、彼の精神性をみた気がしました。
※メキシコの旅、一連のスケッチと写真をまとめました。
ブログでは書ききれていないものもあります。
リンクのページに整理しましたので、ご興味あればご覧頂ければと思います。
keep smiling!
奥野 崇
バラガンは建築家でありつつも、宅地分譲を行うデベロッパーでもありました。
溶岩だらけの荒野を、自身が開発した分譲地内に建つ個人住宅。プリエト・ロペス邸。
何人かのオーナーの所有の間に窓や外壁色の改変工事もあったようですが
現在のオーナーはオリジナルに戻す工事を行い、それがひと段落したとのこと。
そう大きくないエントランスから
大空間の予感はさせながらも、腰壁によって見通せない。
テイストは違えど、アアルトのマイレア邸に近い感覚を覚えました。
のびやかな住宅。
小梁が連続して並ぶ天井は、日本の建築ともそう遠くない印象。
塗り込められた梁が、小さな垂れ壁のようで、
空間が重層していることを強調しています。
詩的なバラガン邸に比べ、全体が明るく陽気な雰囲気。
家族と共に過ごす楽しい気持ちになります。
天井の高さ、建具枠、家具の大きさなど
全体の寸法が大きめにつくられており
空間サイズの比率にあわせて拡大したよう。
空間比率によって見付寸法を調整する手法は
吉田五十八先生の住宅でもみられたことを思い出す。
キッチンやパントリーにはトップライトが設けられ
スポットライトのように照らします。
薄いピンクのタイルと、濃い赤の食器棚。
庭には開発当時の溶岩をそのままに、野趣あふれるつくり。
複数の人々で過ごすことを前提にした明るい住宅。
瞑想的な空間をつくるバラガンの仕事としては、少し意外。
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奥野 崇
メキシコ入り。
首都メキシコシティの住宅街にひっそりある、ルイス・バラガン自邸。
1948年竣工。
1988年に亡くなるまで、後半生を過ごした自邸兼仕事場です。
2004年にはユネスコの世界遺産にも登録されているよう。
通りに対してはそっけない姿。まさかここがバラガン邸とは、といった感じ。
一転、
内部には、写真で何度もみた光景。
光、を感じる。
静止したような空間の数々。
まさに静寂。
各部屋ごとの異なる光によって空間の性格が与えらます。
また、空間の中に絵画的に美しい瞬間がある。
「孤独と一緒にいる時だけ、人は自分自身と向き合える」
とはバラガンの言葉。
一人の時間を大切にし、
生涯独身で、気の許せる限られた人とのみバラガンはこの家で共に過ごしたそう。
バラガンの心を体現する建築。静かな建築。
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奥野 崇
メキシコ入りする前に、アメリカのテキサス州ダラスにて乗り換え。
ほど近くのフォートワースまで足を伸ばして、
1972年のルイス・カーンの仕事キンベル美術館へ。
実はカーンには個人的に思い入れがありまして。
僕が建築を志すきっかけとなった、学生時代の恩師から
当時ルイス・カーンの素晴らしさを聞いておりました。
いくつかの本を読み漁りましたが、
なにしろカーンの言いまわしは詩的で難解。
当時の僕には、理解できていたのか、できていなかったのか。。。
時を経て今ようやく体験する機会を得た、といったところです。
建築自体は特に突飛な形状をしているものではなく、
かまぼこ上の屋根が連続するもの。
一見、古典建築のようでもあります。
頂部にトップライトが設けてあり、
内部側の反射板によって、天井面へ自然光が柔らかく拡散させるのが特徴。
建築の要所にいくつか計画されている中庭。
そろぞれは決して広くないですが、効果的でとてもきれい。
見所がたくさんある建築ですが、
僕はこの建築の特筆すべきは、人の居場所の豊富さ、ではないかと思いました。
建築の一部には、水盤を目の前にすっと置かれた石のベンチがあります。
先の中庭スペースの周辺もそうですが、
展示される芸術や、それぞれの歴史的背景に、
来訪者が物思いにふけるスペースが点在している。
光、という果てしない建築の要素をテーマにしながらも
それを使う人に眼差しが向いているというか。
想いを反芻できる、落ち着きある居場所のつくり込みが行われています。
各部のスケッチ。
ちょうど美術館の展覧会はルイス・カーン特集。
カーンの使用した手帳や画材の展示はもちろん
ドローイングやスケッチの現物掲示も。
カーンのつくる繊細なイメージとは少し異なりましたが
力強く、生命力にみちたものばかり。
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奥野 崇
メキシコ、バラガン視察から無事帰松。
旅のまとめは追ってアップしていこうと思いますが、
進行中現場の様子です。
「立礼茶室のある家」
工事も佳境。
リビングルーム周辺の空間は最終の仕上げを待つのみです。
茶室の廻縁では天井の工事が進みます。
尺八と小舞を藤蔓で縛っていく藤原棟梁。
藤蔓は1日水へ漬けこんで柔らかくします。
縛り方、方向についても細かく調整くださいました。
白竹垂木、女竹尺八、女竹吹寄小舞藤蔓絡み、葦詰打天井の構成。
ひとつひとつ丁寧に。
いよいよ大詰め。
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奥野 崇
「孤独と一緒にいる時だけ、人は自分自身と向き合える」
とはメキシコの建築家、ルイス・バラガンの言葉。
メキシコの豊かな大地を、鮮やかな色彩で抽象化した建築。
その一方、寡黙な空間の写真にじっと見とれてしまったのは、
今は昔、学生のころだったと思います。
バラガン建築へ会いに。いざ、メキシコへ。
keep smiling!
奥野 崇
日本武道館や京都タワーの設計者として知られる
山田守の自邸が期間限定にて公開されるとあって見学に伺いました。
1894年生まれの建築家です。
敷地は青山学院大学のすぐ隣。
1959年、65才のときの建築とのこと。
ブーメラン型の平面にて庭を抱くように建物はあります。
今では、大きく育った緑に埋もれるよう。
要所要所に曲線が使われています。
内部は撮影できませんでしたが、部材の線を消すモダンな和風。
それでも固い固い印象とならなかったのは、曲線の影響でしょうか。
モダンでシンプルな建築を目指しながらも
生物的なやさしい空間をつくろうとする葛藤の中にある建築のように感じました。
続いては、松涛美術館。
白井晟一の設計。1905年生まれで、建築は1980年の竣工。
和でもない、洋でもない、独特な佇まい。
閑静な住宅地の中にひっそりとあります。
一番の特徴は建物の中心にある、水盤のある光庭部分。
周辺の環境から切り離されたひとつの世界。
反響する水の音に満たされた静かな空間。ガラスの反射によって無限に続くよう。
各部材や取り合わせは複雑なものが多いのですが
それらが高度に調律されてひとつの世界観がつくられています。
恣意的なようで、違和感がない。
奥の深い建築。
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奥野 崇
工事中の現場での、とある部材の切れ端。
デコボコとなかなかの複雑さ。
これは何か、というと。答えは敷居。
建具(戸)が走る脚元の部材です。
通常よりも手の込んだこの断面形状には、
ある工夫が込められておりますが、
改めてご紹介するとして。
この部材に丸太柱が取り合うものですから、もちろん加工は難しくなります。
「取り付けが大変ですが。。。」と笑顔で話される大工棟梁。
できる限りの図面は書きますが、最後は人の手。
情熱と誇りをもった職人さんの存在があってこそ、建築は形を成します。
ここは俺の現場だ、と腰を据えてやってくださる方がいる現場には
多くの人を包み込む安心感があるように思います。
ありがたい、の一言。
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奥野 崇
夜、事務所でひとりになると、音楽を聴きながら仕事をします。
その時に流すのは大抵同じ方のもので、その穏やかさが心地よくて。
haruka nakamuraさんの音楽。
夜の静けさにすうっと馴染んで、心が落ち着きます。
恥ずかしながら、人物のことを全然知らなくて調べてみると、
青森県出身の1982年生まれ。なんと年齢が私と同じ。
メディアへの露出は多くないようですが、
インタビュー記事を読んでみて、いいなあ、と。
特に後半あたり。
たくさんにモノがつくられる今、それに向かう姿勢。
ほどよい脱力感の中に垣間みえる、静かな決意。
昨年末には新しい作品を発表されているよう。
piano solo versionは好み。
過去のアルバムのTwilightやGraceはおすすめ。
やさしくなれたような気がします。
keep smiling!
奥野 崇