2020年6月

短夜 (みじかよ)

枕草子の冒頭にて

"夏は夜。月のころはさらなり、やみもなほ、ほたるおほく飛びちがひたる。

また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。"

と、夏の最もすばらしい時間帯は夜である、と清少納言は綴っています。

 

 

ちょうど今は、一年の中でもっとも日が長く、夜が短いころ。

冬とくらべれば、およそ5時間もの差があります。

 

夏至 (6月21日)

昼の時間:14時間26分 (日の出:04時58分)

夜の時間:09時間24分 (日の入:19時24分)

 

冬至 (12月21日)

昼の時間:09時間54分 (日の出:07時11分)

夜の時間:14時間06分 (日の入:17時05分)

 

 

 

その短さを惜しむ気持ちから、

夏の夜を呼んだのが「短夜(みじかよ)」という季語です。

 

一方で、言葉がうまれた背景には、

明けやすさを恨む、男女の後朝の情もそこに重ねられたのだとか。

たしかに「古今集」や「新古今集」にも、

夏の夜の短さをかこつ歌が多く見られます。

 

 

実時間をさらに短く感じさせるような

互いを想いあう儚い気持ちが

「短夜(みじかよ)」という季語には込められている。

なんと切なく、哀調を帯びた言葉でしょう。

 

 

 

keep smiling!

奥野 崇

category : 季節手帖 | posted at 2020.6.23

住まいへの想い

人はおもったよりも

随分敏感で、繊細な感覚を持っています。

 

陽の傾きによる光量の変化、

肌をなでる微細な風のとおり、

香りや音の強弱やその距離感、

気温・湿度の移り変わり。

 

目に見えるものも、見えないものも。

それらは、分かつことなく居心地や安心感に作用しているのでしょう。

 

まさに日常の舞台となる、住まい。

なるべく穏やかで、

じんわり、滲み出てくるような空間がいいなあ。

 

 

一年を経た、氷見のパン工房にて。

日々の出来事を笑顔でお話しくださいました。

 

 

 

keep smiling!

奥野 崇

category : 現場進捗 | posted at 2020.6.22

紫陽花

この季節の代名詞ともいえる、アジサイ。

私たちの事務所でも、小さくて控えめなヤマアジサイが満開をむかえています。

個人的には、ガクアジサイや、ヤマアジサイの可憐な姿に心惹かれます。

ガクアジサイは多くのアジサイの原種のもので、

日本の海岸付近に自生している、別名ハマアジサイ。

一方、ヤマアジサイは山中の沢付近によくみられ、別名サワアジサイとも。

いずれも山野の中ひっそりと咲くその姿に、魅力を感じずにはいられません。

 

アジサイの語源は、はっきりしていないようですが、

歴史を振り返って、その表記の多さに驚かされます。

古くは万葉集で詠まれた「味狭藍」「安治佐為」。

その後も「阿豆佐為」「集真藍」「安知佐井」「七変化」「八仙花」「四葩」などなど。

 

現在、最もよく使われる「紫陽花」という表記は、

平安時代に学者道順が、なんと他の花の漢名と間違えてあててしまったものなんだとか。。。

 

 

どんよりした梅雨曇と、しとしと降る雨の日々。

モノトーンの景色の中、その一隅を色彩豊かに明るくしてくれる姿は、

「紫陽花」という名がぴったり、と改めて思うのは私だけでしょうか。

 

 

 

keep smiling!

奥野 崇

category : 季節手帖 | posted at 2020.6.18

佇まい

建築の正面性をあらわすのに"ファサード"という言葉があります。

約2500年前、ヨーロッパ建築史のはじまりである古代ギリシャにおいて、

その概念は生まれたといわれています。

パルテノンを代表とする神殿建築を前に、

人々に対して、その建築が正面からみて強く、全てわかるようにと考えられたものです。

 

僕は現代の住宅においてもなお、

"ファサード"という言葉がしばしば使われることへの違和感を感じていました。

正面、あるいは見えるところだけを体裁よくすれば良いものなのか。。。

 

来月竣工予定、今治の家の足場が取り払われました。

いわゆる裏手の様子ですが、素朴なその姿が気に入っています。

 

 

雨風をしのぎ、無理なく、整然たる佇まいにする事。

 

それだけで、その姿は十分安心に値する。

ひいては、かつての美しい町並みや集落はそうであったのだと思います。

 

 

 

keep smiling!

奥野 崇

 

category : 現場進捗 | posted at 2020.6.14

拝み虫

二十四節気での芒種の初候、

6月5日から9日頃を、蟷螂(かまきり)が生まれる時期として

蟷螂生(かまきりしょうず)と呼ばれます。

自然の中へ、と足を延ばした週末。

ふと木製ベンチの上に

黒い小さな、ちょうど蟻のような生き物を見つけました。

よく見るとそれは、

成虫と同じ形をした小さな小さな子蟷螂。

 

 

蟷螂(かまきり)といえば、

無謀にも強者へ立ち向かっていくたとえとして

「蟷螂(とうろう)の斧」ということわざがあるほど、日本ではポピュラーな存在。

 

一方で、鎌で獲物を狙う特徴的な姿が、

拝んでいるようにみえるので「拝み虫」という異名を持ちます。

ヨーロッパでもやはり、

その姿に祈りを連想したようで「祈り虫」とも「預言者」とも呼ばれるそう。

おもしろいですね。

 

 

子蟷螂はどうかといえば、、、

エイエイ、としっかりかわいらしく

拝んでいましたとも。

 

 

keep smiling!

奥野 崇

 

category : 季節手帖 | posted at 2020.6.8
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