バラガンは建築家でありつつも、宅地分譲を行うデベロッパーでもありました。
溶岩だらけの荒野を、自身が開発した分譲地内に建つ個人住宅。プリエト・ロペス邸。
何人かのオーナーの所有の間に窓や外壁色の改変工事もあったようですが
現在のオーナーはオリジナルに戻す工事を行い、それがひと段落したとのこと。
そう大きくないエントランスから
大空間の予感はさせながらも、腰壁によって見通せない。
テイストは違えど、アアルトのマイレア邸に近い感覚を覚えました。
のびやかな住宅。
小梁が連続して並ぶ天井は、日本の建築ともそう遠くない印象。
塗り込められた梁が、小さな垂れ壁のようで、
空間が重層していることを強調しています。
詩的なバラガン邸に比べ、全体が明るく陽気な雰囲気。
家族と共に過ごす楽しい気持ちになります。
天井の高さ、建具枠、家具の大きさなど
全体の寸法が大きめにつくられており
空間サイズの比率にあわせて拡大したよう。
空間比率によって見付寸法を調整する手法は
吉田五十八先生の住宅でもみられたことを思い出す。
キッチンやパントリーにはトップライトが設けられ
スポットライトのように照らします。
薄いピンクのタイルと、濃い赤の食器棚。
庭には開発当時の溶岩をそのままに、野趣あふれるつくり。
複数の人々で過ごすことを前提にした明るい住宅。
瞑想的な空間をつくるバラガンの仕事としては、少し意外。
keep smiling!
奥野 崇