建築家の斎藤裕さんの著作である「アールト10の住宅」の中でみたヴィラマイレア。
藤を丁寧に巻きつけた黒塗りの丸柱、階段のまわりにまるで木立のように林立する円形の格子、
森の中に差し込む白い外壁、黄金色の光で満たされる窓辺。
手持ちの本が付箋だらけになった今でも、自分にとって大切な一冊となっています。
フィンランドの西海岸の港町ポリ近郊ののどかな風景が続くノールマルク村。
アアルト夫妻と親交の深かった、企業家ハリーとマイレ夫妻とその家族のためのもので
大きなマツの林の隙間を縫うようにあります。
1939年竣工、アアルト41才のとき。
建物はL字型の構成でリビングなどの建物本体とサウナ小屋を半屋外テラスで緩やかに繋ぐ
ゆったりとした平面。
テラス脇の暖炉。
階段と一体となっていておもしろい。
石垣の一部が暖炉で、気がつけば階段でもあった、という格好。
現在でも2階部分はプライベートユースで1階のみの開放。
あわせて内部の撮影はご遠慮くださいとのことですので、下手な文章とスケッチにて。
玄関を入ってからの階段越しの中庭への眺めや、ずるずると続くリビングルームの景色は感動的です。
スケッチはリビングルームの様子。
天井の高さは均一に続く大きなワンルームなのに変化に富んだシーンが各部分に展開していきます。
なんとも言えないその開放感と浮遊感はなんなんだろう。
腰壁の高さを家具と人の目線の高さを関連させながら変化させています。
絶妙の高さ加減。
「あ 」
本のなかでみた丸柱や丸型格子は
外部のマツ林を室内に引き込むように意図されたものと気付きます。
それは
つよく力のあるマツの林の中に、
アアルトの手によって調律された外のような内部にいる感じ。
景色としての外部ではない、内外が入り乱れた、ふわふわした不思議な感覚。
アルヴァ アアルトの最高傑作と言われるこの住宅。
内部と外部をつなぐという大いなる矛盾と魅力を内包する建築。
なんとか自分の建築で整理してみたい。
建築の持つ奥の見えない可能性を感じられる忘れられない体験となりました。
keep smiling!
奥野 崇