住宅はその特性上、
一旦住まいはじめるとなかなか見学することは難しい。
更に名建築家の設計となるとなおさらのこと。
とある方からのお話しで吉田五十八さんが設計された住宅が見れる、
とのことで、打合せも絡めていってきました。
吉田五十八さんは明治27年生まれの建築家で
数寄屋建築の近代化に努められ、
荒組の障子や大壁造りの壁体、アルミ材の下地窓や簾など
数々の独自の手法を通じて、因襲化した数寄屋建築を再生させた方。
後に文化勲章を受けたことでも知られます。
場所は成城。
いわずも知れた東京の高級住宅街で約560坪のゆとりある敷地に
ゆったりと平屋でかまえています。
八掛の枠廻りや、鴨居と長押の一体化などにより
線の数を減らした室内はすっきりした印象。
各室の平面サイズに対して、天井高さや材の見付寸法を調整しており
プロポーションへの拘りを感じます。
屋根の高さを押さえるために小さな中庭を二つ配置しており
ちょうど風抜きの効果もあり、とても気持ち良い。
風が抜ける建物はやはりいいなあ、と。
お茶室は残念ながら入れませんでしたが、
座ってみて高さを確認してみる。ちょうどいい高さ寸法で落ち着きます。
お茶室からは眺められませんでしたが、あの開口部からの風景はどんなだろう、と想像するのも愉しいものです。
築後48年経過した建物からは、
伝統を引き継ぐ頑なさだけでなく
生活を支える器として、人の営みに寄りそう「優しさ」を感じました。
物としての美しさはもちろんですが
人に寄りそう、柔らかく、優しい建築をつくっていきたい。
keep smiling!
奥野 崇