
格子の陰影が天井へ写ります。
柊の家、写真撮影。
関東より建築写真家の小川重雄さんがきてくださいました。
梅雨空続きの合間の五月晴れ。
素敵な光を掴まえられたのでは。
出来上がりが待ち遠しい。
keep smiling!
奥野 崇

1、WORKSに余戸の家、施工中物件を追加しました。
2、SKETCHを公開しました。
私のライフワークである、建築をまなぶ旅。
世界中、いく先々で出会った建築や暮らし、人々をスケッチする。
これらは現地にて視察の最中、描き、色付けされたもの。
その瞬間、を記したそれらは、写真よりも雄弁かもしれません。

丹原の家、地鎮祭。
集まった皆の想いが通じたのか、雨も上がりました。
石鎚の眺めとともに暮らす家。
その色彩、雲の具合、透明度によって季節や天気、時を感じ、自然と近しくある暮らし。
私自身がかつて地元の山、高縄山をみた様子と重なるようでなんだか嬉しい。
内外装とも自然素材の家。
じっくりしっかり進んでまいります。
keep smiling!
奥野 崇

少し前、ですが。。。
建築写真家の小川重雄さんより
余戸の家の竣工写真が届きました。
中庭からの光が美しい一枚。
ひとが集まる、大きな土間サロンがある家。
月末頃には、ホームページにてお披露目できようかと思います。
keep smiling!
奥野 崇

外部枠まわりの造作が続きます。
メインの開口部には、
大型の木製建具、ガラス、断熱ロールスクリーン、各種仕上げ材が直接絡んできます。
全ヶ所の原寸図での打ち合わせを終え、
細やかな仕事を重ねて下さっています。
keep smiling!
奥野 崇

柊の家は建築工事をほぼ終えました。
天井には淡く綺麗な光が。
明日からの工務店検査、設計検査を経て
お引渡しの流れとなります。
続いて、選定協力させて頂きました家具の搬入、ウインドウトリートメントの取り付け。
いよいよ、です。
keep smiling!
奥野 崇

1937年にストックホルム郊外に造られた、
アスプルンド自身の小さな夏の別荘である「夏の家」。
1940年、55才で亡くなった氏の作品としては晩年のものにあたる。

接する道路からはしばらく歩いてアプローチするため
湖と森に囲まれた完全にプライベートな空間。
北側に森があって、南に湖がある敷地ということに
アスプルンドはこだわったんだそう。

控えめな玄関。飛び石の様子は日本の影響とか。





夏の短い地域。
陽の少ない、長く厳しい冬を過ぎた明るい夏を楽しむ家。
アスプルンドが完全に人目のない敷地にこだわったのかが分かります。
プライベートな外部を一つの部屋のように扱い
一転、内部空間は親密な空間が続きます。

日中は外で日光浴や釣りなどを楽しみ
日除けのスペースとして、家族と静かな夜を過ごすスペースとして建築は考えられたのでしょう。
内外をつなげるため建物には五つもの出入り口が計画されています。


プランの中で特筆すべきは部屋同士のつなげ方。
リビングと近接するダイニング、玄関脇のイージーチェア部分が
それぞれの家具の向きを変えながら、一同に目にはいってきます。
目線はあわないけれど、視界の中にははいる。
自分の時間を過ごしながらも共に過ごす一体感を感じる。
「とおくはなれてそばにいて」村上龍の著作でこのような題があったような。



この旅の一番の心に残る
慎ましくも、親しみ深い小さな小屋のような建築。




フィンランド、スウェーデンの北欧の旅を通じて
空のスケッチが多いことに気付きます。
淡く、美しいグラデーションを描く夏の空。
-20℃にもなる厳しい冬を越え
人との繋がりや交流の恋しさを爆発させるような夏の季節。
特にアアルトの建築には他の誰かといることが思い浮かぶものが多くて
人懐っこい人間性を勝手に想像してしまいます。
いろいろな手法は
いきいきとした人の生活と時間のために。
建築はある願いを込めた、それでいて大きな受け皿でありたい。
風土や人に寄り添う存在でありたい。

当たり前のことを、ひたすら真摯に取り組む巨匠の姿を思い描いてしまう旅となりました。
keep smiling!
奥野 崇
フィンランドの西の古都トゥルクを後にして、向かうはバルト海の対岸にあるスウェーデンのストックホルムへ。
宿泊型のフェリーにて、半日の移動です。

限られた面積の中で最大の客室数をとるため、ミニマムな個室。
普段の住宅の設計ではなかなかない寸法体系です。
洗面とトイレのシャワーが近接しているため、床のシャワーの水滴取り用のゴムベラが。
同一スペースを兼用する工夫ということですね。
ストックホルク入りの目的は、
エーリック・グンナール・アスプルンド(1885-1940)の建築を体験するため。
現在進めている寺院の設計の完了前に宗教観は違えど、アスプルンドの森の墓地をみてみたかった。
それ程に奥深さを感じてしまう建築だったのです。

ストックホルム郊外の広大な敷地。
市の管理する墓地で、礼拝堂や火葬場などの一連の施設があります。
1918年からアスプルンドの最期まで続いた、文字通りのライフワークとなった仕事。
ちなみに、スウェーデンでは葬儀税(正式な呼び方でないです)なるものがあって
いかなる国民も等しく葬儀を行うことができるそう。
一連の施設は写真の丘の向こう側にあって、利用者は自分の足音をききながらそこに向かいます。

アプローチの先に十字架がたてられ
十字架の道、と呼ばれます。


全体のランドスケープは軸線を巧みに操作しながら
植栽を整然と並べてみたり、列植されてみたり
樹木の密度と光量によってシーンをつくっていることに気付きます。

森の礼拝堂。
軒がとても低いので目線と軒の水平ラインが揃い
屋根の三角形が強調されます。
乱暴な意見ですが、個人的に堀部さんのつくった納骨堂のアプローチと重なって感じます。
入り口の門にはアスプルンドの記した衝撃的なメッセージ。
「今日は私、明日はあなた」




大礼拝堂には大切な人をなくした家族へのやさしさが随所にみられます。
最も悲しみの深い喪主の席の前には、家庭的な雰囲気により気持ちを和らげるための絨毯のような彫刻。
亡き人のことを語らえるよう皆の顔が見えるよう角度をつけたベンチ。
水面に映り込む十字。




美しい北欧の空を背景にみる計画の壮大さ。
樹木の密度によってシーンをつくる発想。
ここまでもか、と唸るほどの人の気持ちによりそう設計。
すさまじい水準の壮大さと繊細さの共存に、ただただ感動の連続であった。

keep smiling!
奥野 崇

フィンランドの西の古都、トゥルクにある復活の礼拝堂。
1941年竣工、エリック・ブリュッグマン設計。
入った瞬間、神聖な空気が流れることを感じてしまう、特別な空間。
汎ヨーロッパ的な意味合いを持つ古典主義に対して、
民族や国家などのアイデンティティを重要視し、より地域性や固有の職人技術を主張する
ナショナルロマンティシズムの頂点にあると称される建築です。
片側から光が差し込む、非対称な空間の絶妙な明るさ感。
設計者自身も戦争により、友人を亡くした中での設計作業だったとのこと。
深い悲しみの上に、静かなる生きる力を
やさしくやさしく与えてくれるような柔らかさ。




細部には丁寧な職人仕事。
つくる作業そのものが、亡き人への想いを込めるようなものだったのだろう。

スケッチをしながら平面の微妙な変形に気付きます。
建築に込める哲学や想いを生み出す詩的思考と
それを表現する具体的な設計技術や寸法センス。
その両輪の実現により、人の心をつかむ建築となりうる。
keep smiling!
奥野 崇
建築家の斎藤裕さんの著作である「アールト10の住宅」の中でみたヴィラマイレア。
藤を丁寧に巻きつけた黒塗りの丸柱、階段のまわりにまるで木立のように林立する円形の格子、
森の中に差し込む白い外壁、黄金色の光で満たされる窓辺。
手持ちの本が付箋だらけになった今でも、自分にとって大切な一冊となっています。

フィンランドの西海岸の港町ポリ近郊ののどかな風景が続くノールマルク村。
アアルト夫妻と親交の深かった、企業家ハリーとマイレ夫妻とその家族のためのもので
大きなマツの林の隙間を縫うようにあります。
1939年竣工、アアルト41才のとき。


建物はL字型の構成でリビングなどの建物本体とサウナ小屋を半屋外テラスで緩やかに繋ぐ
ゆったりとした平面。

テラス脇の暖炉。
階段と一体となっていておもしろい。
石垣の一部が暖炉で、気がつけば階段でもあった、という格好。
現在でも2階部分はプライベートユースで1階のみの開放。
あわせて内部の撮影はご遠慮くださいとのことですので、下手な文章とスケッチにて。

玄関を入ってからの階段越しの中庭への眺めや、ずるずると続くリビングルームの景色は感動的です。
スケッチはリビングルームの様子。
天井の高さは均一に続く大きなワンルームなのに変化に富んだシーンが各部分に展開していきます。
なんとも言えないその開放感と浮遊感はなんなんだろう。

腰壁の高さを家具と人の目線の高さを関連させながら変化させています。
絶妙の高さ加減。
「あ 」
本のなかでみた丸柱や丸型格子は
外部のマツ林を室内に引き込むように意図されたものと気付きます。
それは
つよく力のあるマツの林の中に、
アアルトの手によって調律された外のような内部にいる感じ。
景色としての外部ではない、内外が入り乱れた、ふわふわした不思議な感覚。

アルヴァ アアルトの最高傑作と言われるこの住宅。
内部と外部をつなぐという大いなる矛盾と魅力を内包する建築。
なんとか自分の建築で整理してみたい。
建築の持つ奥の見えない可能性を感じられる忘れられない体験となりました。
keep smiling!
奥野 崇