枕草子の冒頭にて
"夏は夜。月のころはさらなり、やみもなほ、ほたるおほく飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。"
と、夏の最もすばらしい時間帯は夜である、と清少納言は綴っています。
ちょうど今は、一年の中でもっとも日が長く、夜が短いころ。
冬とくらべれば、およそ5時間もの差があります。
夏至 (6月21日)
昼の時間:14時間26分 (日の出:04時58分)
夜の時間:09時間24分 (日の入:19時24分)
冬至 (12月21日)
昼の時間:09時間54分 (日の出:07時11分)
夜の時間:14時間06分 (日の入:17時05分)
その短さを惜しむ気持ちから、
夏の夜を呼んだのが「短夜(みじかよ)」という季語です。
一方で、言葉がうまれた背景には、
明けやすさを恨む、男女の後朝の情もそこに重ねられたのだとか。
たしかに「古今集」や「新古今集」にも、
夏の夜の短さをかこつ歌が多く見られます。
実時間をさらに短く感じさせるような
互いを想いあう儚い気持ちが
「短夜(みじかよ)」という季語には込められている。
なんと切なく、哀調を帯びた言葉でしょう。
奥野 崇