人はおもったよりも
随分敏感で、繊細な感覚を持っています。
陽の傾きによる光量の変化、
肌をなでる微細な風のとおり、
香りや音の強弱やその距離感、
気温・湿度の移り変わり。
目に見えるものも、見えないものも。
それらは、分かつことなく居心地や安心感に作用しているのでしょう。
まさに日常の舞台となる、住まい。
なるべく穏やかで、
じんわり、滲み出てくるような空間がいいなあ。
一年を経た、氷見のパン工房にて。
日々の出来事を笑顔でお話しくださいました。
keep smiling!
奥野 崇
この季節の代名詞ともいえる、アジサイ。
私たちの事務所でも、小さくて控えめなヤマアジサイが満開をむかえています。
個人的には、ガクアジサイや、ヤマアジサイの可憐な姿に心惹かれます。
ガクアジサイは多くのアジサイの原種のもので、
日本の海岸付近に自生している、別名ハマアジサイ。
一方、ヤマアジサイは山中の沢付近によくみられ、別名サワアジサイとも。
いずれも山野の中ひっそりと咲くその姿に、魅力を感じずにはいられません。
アジサイの語源は、はっきりしていないようですが、
歴史を振り返って、その表記の多さに驚かされます。
古くは万葉集で詠まれた「味狭藍」「安治佐為」。
その後も「阿豆佐為」「集真藍」「安知佐井」「七変化」「八仙花」「四葩」などなど。
現在、最もよく使われる「紫陽花」という表記は、
平安時代に学者道順が、なんと他の花の漢名と間違えてあててしまったものなんだとか。。。
どんよりした梅雨曇と、しとしと降る雨の日々。
モノトーンの景色の中、その一隅を色彩豊かに明るくしてくれる姿は、
「紫陽花」という名がぴったり、と改めて思うのは私だけでしょうか。
keep smiling!
奥野 崇
建築の正面性をあらわすのに"ファサード"という言葉があります。
約2500年前、ヨーロッパ建築史のはじまりである古代ギリシャにおいて、
その概念は生まれたといわれています。
パルテノンを代表とする神殿建築を前に、
人々に対して、その建築が正面からみて強く、全てわかるようにと考えられたものです。
僕は現代の住宅においてもなお、
"ファサード"という言葉がしばしば使われることへの違和感を感じていました。
正面、あるいは見えるところだけを体裁よくすれば良いものなのか。。。
来月竣工予定、今治の家の足場が取り払われました。
いわゆる裏手の様子ですが、素朴なその姿が気に入っています。
雨風をしのぎ、無理なく、整然たる佇まいにする事。
それだけで、その姿は十分安心に値する。
ひいては、かつての美しい町並みや集落はそうであったのだと思います。
keep smiling!
奥野 崇
二十四節気での芒種の初候、
6月5日から9日頃を、蟷螂(かまきり)が生まれる時期として
蟷螂生(かまきりしょうず)と呼ばれます。
自然の中へ、と足を延ばした週末。
ふと木製ベンチの上に
黒い小さな、ちょうど蟻のような生き物を見つけました。
よく見るとそれは、
成虫と同じ形をした小さな小さな子蟷螂。
蟷螂(かまきり)といえば、
無謀にも強者へ立ち向かっていくたとえとして
「蟷螂(とうろう)の斧」ということわざがあるほど、日本ではポピュラーな存在。
一方で、鎌で獲物を狙う特徴的な姿が、
拝んでいるようにみえるので「拝み虫」という異名を持ちます。
ヨーロッパでもやはり、
その姿に祈りを連想したようで「祈り虫」とも「預言者」とも呼ばれるそう。
おもしろいですね。
子蟷螂はどうかといえば、、、
エイエイ、としっかりかわいらしく
拝んでいましたとも。
keep smiling!
奥野 崇