先日のこと。
山口県南部の大津島にある、1日1組の小さな宿「小屋場 只只」さんへ。
大津島は、徳山港から生活用フェリーで30分の南北約10kmの小さな島。
太平洋戦争末期に人間魚雷回天の訓練基地があったところで、当時の軍事施設の一部は現在も残っています。
訓練にのぞんでいたのは二十歳そこそこの若者だったと、後から知りました。
激動の悲しい歴史と、そんなことはまるで感じさせない穏やかな海。
そのすぐ傍に飾らない空間はありました。
築10年を超えて
建築がもつ作為は時の経過とともに薄れ、
オーナーの哲学と、地に足が着いた宿守の方の空気感によって、もうひとつの家に帰ってきたような感覚。
勝手に「たくさんのしてもらえる」を期待していた自分に気付き、少し恥ずかしくもありました。
オーナーが記した宿の記録帳に
「自分のためではなく、他者のために全力で生きた若者がいた。全国の人にそのことを知ってほしかった」とありました。
贅を尽くした料理やサービス・建築だけが価値ではない。
伝えたい想いと空間と時間があれば、それでいい。
何にもないことは人を豊かにさせてくれます。
keep smiling!
奥野 崇