また、来たい。と思わせる宿が京都にあります。
いわずも知れた、俵屋旅館。
notesに掲載しております、aman resortsの創設者エイドリアンゼッカに
「hotelの原点は俵屋にある」と言わしめた世界に誇る日本旅館で、
スティーブジョブスも定宿にしていたことでも有名です。
10年前、茶道の先生に紹介して頂いてからの憧れ、で
念願の俵屋滞在となりました。
京都御所のほど近く、混み入った界隈にひっそりとあります。
タクシーがつくなり、さっと数人の方がお出迎え。
カメラでもついているのか?と思うほどの、さすがのホスピタリティ高さ。
玄関まわりは小さく、質素な構え。
ふわり、と香炉の香りが漂います。
履物を預け、館内で最初に迎えてくれたのが、坪庭の藤の花。(訪れたのは四月末でした)
俵屋さんの醍醐味のひとつは、その設えの季節感。
わずか二帖ほどの空間でしたが、
薄い紫の花に光が反射し、あたりを照らす姿には神々しさまで感じます。
宿泊させて頂くのは「竹泉」。
吉村順三氏が設計、中村外二工務店が施工を担当しており
後から知ったことですが中村好文さん著作の意中の建築でも紹介されていました。
八帖と三帖の続間からなり、占用面積はうんと小さいのですが
小さな専用の庭に面しており、静かでとても落ち着きます。
特大の網代天井には銀紙が裏貼りされていたり、換気扇など設備の処理も徹底されており
設計当時の工夫や工事途中でのやりとりが、目に浮かんできます。
図書室やアーネストスタディと呼ばれる別室。
庭への解放と、室内の包まれる感覚のバランスが素晴らしく
たくさんの愉しい居場所が用意されています。
開く、だけでない外部との接点のつくり方は住宅にも参考になります。
滞在でのスケッチの一部。
俵屋さんは、
旅館として長い歴史を誇り、その伝統を大切に守り維持しながらも、
他方で現代のライフスタイルや世界中のいいもの、を取り入れながら、
そこに泊まるお客様に対して感動を与え続けています。
人、と時間、に対して真摯に向き合い「もっと」を追い続ける姿こそ
今回の旅での一番の学びでありました。
keep smiling!
奥野 崇